旅の最終日は二ースのシャガール美術館を訪れた。展示されていた大きなサイズの作品はどれも幻想的、民族的、宗教的で、ユダヤ人として受けた迫害を人間愛と宗教で乗り越えてきた人生観がひしひしと伝わってきた。美しい自然、美しい街、美味しい食べ物、美的な感覚に囲まれた生活。フランスの旅は今まで味わったことのない価値観を感じた印象だった。
エクサンプロバンスからマルセイユへ降りてコルシカ島へ渡り、島の険しい山々を横断した後、コート・ダジュールが今回の旅の終点。多くのアーティスト達がこの場所の光にを魅了されるわけがよくわかった。確かにここの光は他では見たことのない格別な美しさだ。
南仏エクサンプロバンスの丘にあるセザンヌのアトリエを訪れた。木漏れ日が美しい林の中にあるアトリエは、北側に巨大な窓をつくり南側の窓は小さめにして、一日中フラットな光が入るように設計されている。彼の静物画に描かれた小瓶や果物がいろいろ並んでいて、100年以上前に彼が見た光を直接感じられたのは貴重な経験だった。アトリエをでてから彼が頻繁に通った近くの丘に登ってサント・ヴィクトワール山を見た。興味深かったのは、山は思っていたより遠くにあり、彼が中望遠レンズの視角で風景を見て絵を描いていたということだ。夜はセザンヌが好んで通ったカフェ「レ・ドゥ・ギャルソン」で食事をした。この国では生活行動や空間全体が高いレベルのアート感覚に支えられているように感じる。
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March 2021
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