11月3日から青山の PROMO-ARTE GALLERY で開催される ART Photography ASIA の展覧会には最新作の大判作品4点を展示する。美術作品としての写真を追求していると、絵画や版画などの他のミディアとの違いについて時々考える。写実性を重んじている作家が描いた油彩や水彩、水墨、版画、鉛筆画などは、使う紙やエンボスなどのテキスチャーの僅かな違いはあるにせよ、極めようとしている表現はほとんど写真と変わらないとさえ思える。その一方で、写真の「記録性」とは異なった方向性を探ろうと、高度に抽象化された表現や、幻想やロマンを感じさせるクラシックな絵画的表現を追求している写真作家も多い。デジタル技術の発展と共に写真の表現性が飛躍的に広がった今、私は写真による美術表現についてあらためて考える時が来ていると感じている。今、私にとって最も大切な創造プロセスは、カメラで捉えられた「光の強弱信号」を「感性で感じた脳信号」に変えることだ。特に、写実性を究極まで追求する事により、心では感じられるが目には見えないものまでも炙り出すことができるスーパーリアリズム表現は、写真技術の特徴を生かす最も興味深い世界の一つだ。
I will exhibit four large-format prints at Promo-Arte Gallery, Tokyo, 11/3 through 8. As I pursue photography as artwork, I often think about the differences between photography and other art media, such as paintings and lithography. The realistic expression of these non-photographic media seems to have common goal with photography even though subtle, textual differences exist due to the materials used. On the other hand, a large number of fine-art photographers are making their works highly abstract or going towards fantastic and romantic expression trying to depart from the documentary and reportage nature of photography. With the development of digital technology, capability of photographic fine-art expression has widened dramatically, and it is the right time for me to revisit and confirm how I should approach my creative work. To me the most important creative process at this moment is the process of converting the light signals captured by a camera to the brain signal that was felt by my sensibility. In particular, super-realism, which can be reached by the pursuit of realism to the ultimate, is one of the most interesting areas of photographic expression. 今回の展覧会は連日大盛況。閉館するまでほとんど一日中立ちづくめでお客様と話している。忙しくて、記録写真を撮ったり、ブログに様子を掲載する余裕がないが、沢山のお客様に作品を見ていただけるのは本当に嬉しい。いよいよ明日(22日)日曜日が最終日。今日も伊豆高原はすばらしい初夏の陽気だ。
Tomorrow will be the last day of my exhibition. 今回の展示は、3月のさんしんギャラリーと同じく点数を絞り、ゆったりしたレイアウトを心がけた。その結果、お客様にはいつもよりゆっくり作品を鑑賞していただけていると感じる。また、40年前、20年前の作品は比較的脱力系で情緒的、最近のものは表現の強い哲学的なものが多いので、見終わったあとのお客様の反応が興味深い。
帰りがけに、「来て良かった」と小さな声でひとりごとを言うお客様がいるのは何よりも嬉しい。 I am happy to hear some visitors talking to themselves "I enjoyed the show", just before they leave. 昨晩、風雨が台風のように吹き荒れたあと、今朝は初夏の陽射で素晴らしい一日が始まった。
毎年お越しになる方、会期中にお友達を連れて何度もいらしてくださる方、写真を始めたばかりの若い方など、沢山の熱心なお客様方と今日は一日中会話した。頭が少し疲れたので、夕方、運動がてら海を見にでかけた。波のうねりが美しい一日の終わりを運んできた。 A stormy weather had gone last night, and a summer-like beautiful day started this morning. I went to see the ocean at sunset after talking with many visitors all day long. It was a beautiful end of the day. 今年のアートフェスティバルは初日からお客様の数がかなり多い。
5月の新緑のなか、ゆったりと時間を過ごしていただいているのを見るのはとても嬉しい。 アートフェスティバルの真の価値はこういう時間を過ごすことにあるのだろう。 A large number of visitors has come to the show since the show started three days ago. I am very happy to see them enjoying my artworks as well as the beautiful nature of Izu.
My next solo show will start on Sunday, 5/1, at my studio in Izu, and I am now in the process of finalizing the selection of the works for the show. Since this is a compilation show of my past works, I am getting a good opportunity to learn how my works evolved up to present and think about next step.
5月1日から始まる伊豆高原アートフェスティバル参加展の準備を進めている。3月に三島で催行した個展と共に、今までの作品をまとめるコンピレーション展にしたいと思い、タイトルを「RETROSPECTIVE」とした。3月のものとは内容に変化を持たせたいので今まで試行錯誤していたが、ようやくその骨格が見えてきた。アトリエでの展示とさんしんギャラリーのようなホワイトキューブでの展示と違うのは、この壁面は黒色だからこの作品、この小さなコーナーにはこの作品というように、作品の内容やサイズ選びが展示される空間の形や色にかなり影響されるところだ。その上に個々の作品と作品グループ、そして展示全体を関連づけて、印象やメッセージ性の流れを考えながら展示レイアウトを作り出していく。これは時間がかかり苦労するところだが、クリエイティブなプロセスなのでとても面白い。コンピレーション展は作品群を眺めながら自分の表現が変化してきた道筋を俯瞰できるので、今後の作品づくりの参考になる。今回の展覧会も多くの方々に楽しんでいただけるようなものにしたい。 I will be exhibiting a few new prints processed from old negative films.
Since the prints are my current interpretation of the 40 year old images, the whole process makes me feel like going back to the past on my time machine. さんしんギャラリー 善 での展覧会が終って一息ついたら、もう伊豆高原アートフェスティバルが5月1日から始まるから忙しい。今回展示する作品は3月に展示しなかった内容も少し含めてみたいと思い、かなり昔のネガを探していたら、カリフォルニアのヨセミテで40年前(1976年)に撮影したものが出てきた。あまりにも昔のネガなのでフィルムが弱々しく、恐る恐るスキャンしてみたが、結果を見て驚いた。レンズはシャープではないが、諧調性が軟調でとても良い。当時はローライフレックスとゼンザブロニカを使っていたが、ネガの横に遮光版の光線漏れが見られるので、どうもブロニカで撮影したものらしい。あの頃はアンセルアダムスの表現を追いかけていた事を思い出す。今回展示する作品は過去のネガを現在の私が解釈して制作したものなので、画像調整をしているとタイムマシンに乗って時間を戻っていく感じがしてくる。もう一つ選んだ1990年代後半に撮影されたニューヨークのスナップからは、フィルムの粒状性が20年くらいの間に飛躍的に変化したことがよく分かる。ニューヨーク時代はローライフレックス(2眼)を中心に街の撮影していたが、ランドスケープには4x5や8x10の大判カメラもこの頃から使い始めている。デジタルによるモノクロームプリントを真剣に追求し始めたのもこの頃だ。2000年代に入ってサンタフェに移住してからは、大自然のサイズに圧倒されて大判フィルムカメラでの撮影が中心となった。最近はランドスケープには大判フィルムの代わりにデジタルバックを使い始めている。デジタル画像は、フィルムとは異なる現代的な表現ができるということがわかってきて興味深々だ。しかし、こうして昔撮影された画像を眺めてみると、時間をかけて感性が蓄積されたフィルム技術の味も大変心地よい。 今の写真環境は撮影から最終画像づくりまでの時間が短縮され、毎日大量の写真が目の前を流れていく。消費材としての写真づくりが膨らんでいくなかで、作家が一枚のイメージととことん向き合って感性を封じ込めて作り上げる作品は今まで以上に大切なものになってきているのではないだろうか。 My solo show at Sanshin Gallery Zen is now over. It was the most memorable show I have ever experienced among all. I would like to thank you all who came to see the show.
さんしんギャラリー 善での25日間の会期はあっという間に一昨日終了した。 歳を重ねるごとに時が経つのが加速するのは確かだが、今回そう感じるのはお越しいただいた方々との心の交流の密度が高かったおかげだと感じる。 展覧会の開催は作品制作や準備、計画、打ち合わせ、搬入、搬出、そして会期中のお客様との対応など、体力や忍耐力がいることが多い。しかし、今回の展覧会はこの15年間の一つの節目としてまとめた作品の展示だったこともあり、「充実した楽い時間だった」という印象だけが残った。作品づくりと展覧会を繰り返し行っていると、その行為の最も大切な部分が浮き彫りになってくる。それは作家ごとにそれぞれ異なるのかも知れないが、私の場合、自分の感覚(エネルギー)が作品を通じて見ているお客様に伝わって共鳴している実感のように思う。 このすばらしい空間を今回提供し展示を支援してくださった三島信用金庫の関係者の皆様と佐野美術館の関係者の皆様、そして準備段階からギャラリー運営まで毎日お世話になった学芸員の皆様に感謝感謝感謝!質の高い美術展示活動を通じて地域文化に貢献していくというギャラリー設立理念の流れのなかで過ごした貴重な25日間だった。 三島のさんしんギャラリー善は市内にある佐野美術館がすべての運営を任されている。そのため、来訪されるお客様方は美術を日常の生活のなかで楽しんでおられる方々がほとんどで、いろいろお話していると、本質を瞬時に見極める鋭い審美眼を持っていることに驚かされる。しかし、そのような方々でもファインアート・フォトグラフィーを鑑賞した経験はほとんどなく、アートとしての写真を広げる努力がもっともっと必要だということを痛切に感じている。
今回の会期中に毎日のように繰り返される質問とコメントを書き留めておく。
欧米と異なる日本での歴史から、FINE ART PHOTOGRAPHY を「写真」と呼ぶのは美術愛好家や一般の人々に正しい理解を促す阻害要因になっていると感じる。 また、プリント という言葉も一般には「印刷物」と混同されてアートとしての作品を普及させるのに阻害要因になっている。ARTと言う言葉の使い方も混乱を呼んでいるので、少し整理して新しい言葉使いを考えることが必要だと思っている。 Mishima, where my solo exhibition is currently held, is a peaceful and cultural city.
三島というところは他の町にはない不思議な魅力がある。富士山のすそ野から湧き出る水が町の中心部をあちこち流れていて、流れの脇に人々の生活がある。人々の表情は湧水のように穏やかで爽やかそして優しい。裕福な町という印象はないが、文化的な豊かさを感じる。積み上げてきた生活のスタイルや文化を大切にしながらこの町を発展させていこうという人々の配慮を感じる。そして食べ物が美味しい。ここは日本のこれからの町づくりの手本となる大切な要素を持つ町だということが分かってきた。この町(街)で展覧会をさせていただいているのはありがたい。 By showing smaller number of works per wall space, visitors can appreciate each piece of work taking more time. It is nice to see many visitors stay one hour or more to see the whole work.
ファインアート作品はゆったりした展示が個々の作品をじっくり観ていただくのに大切だと感じる。そのあたりが複数の作品でメッセージを伝えるフォトジャーナリズム系の作品とは異なるのだろう。今回の展覧会では1時間以上会場にいる熱心なお客様がかなりいるのは嬉しい。このような広いギャラリー空間はとても貴重だ。 My solo exhibition started with many art enthusiasts coming on the first day and a couple of press interviews. Nice to feel that visitors are enjoying the show.
展覧会初日から美術鑑賞に熱心な皆様にお越しいただき、作品を囲んで会話も弾む。来訪された方に展示を楽しんでいただけるのはアーティストとして何事にも代えがたい。ギャラリー全体が大自然の空間になっていると何人かの方に言われた。 Installation for my solo exhibition took place today at Sanshin Gallery Zen with a lot of help received from the gallery curators as well as the people of the picture frame company. The reduced number of works makes the exhibition more attractive since visitors can appreciate each piece of work. Even the largest piece of work looks small in this big exhibition space. It makes me feel to challenge to make larger pieces of work.
2/27は搬入日。学芸員の方々といつも額装でお世話になっている会社の方にお手伝いいただいて気持ちのよい展示が出来上がった。今までかなり絞り込んだ展示点数をさらに絞り込み、一点一点落ち着いて見られる美術館レイアウトになった。この広い展示空間ではかなり大きな作品でも小さく見える。ここでは大作にチャレンジする画家の気持ちがよくわかる。 |
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